あそんで笑ってつながって
2000-2001   
思いきり笑い、みんなで言葉をかけあいながらあそんだ『冬の子ども会』が無事終了しました。当日の様子を、わずかですが、コース毎のエピソードと共に報告します。

スキーキャンプ [伊那プラン]
 楽しくたくさん滑ることを最大の目標にして、どの組も滑りまくりの3日間でした。初めはかなり苦戦していた子も、一度こつをつかむとあっと言う間に上達し、最後には自慢気な表情を浮かべて滑走しています。
 今回生まれて初めてスキーに挑戦したITさん(寝屋川市/小3)は初日からやる気満点。何と講習開始90分後にはリフトに乗って中腹部から最下部までをスイスイ滑り、最終日にはリーダーの7〜8分めのスピードなら着いて来られるレベルにまで達しました。
 本人のやる気が何よりの上達の原動力だと改めて思い知らされました。
スキーキャンプ [志賀高原・白馬プラン]
 全般に寒い日が多かったのですが、その分雪は質量共に十分で、ゲレンデも空いており、スキーを満喫できるキャンプになりました。
 どちらのプランも急斜面や林間コース等、さまざまなゲレンデをたっぷり滑り、また班ごとにフォーメーション(全員でタイミングやターン幅を揃える滑り)にも挑戦。白馬プランではさらに43人の子どもたち全員で長大なトレーンを成功させ、リフトに乗っている一般客の注目も集めていました。
 宿舎での歌・ゲームや出し物大会などは、アルプス子ども会の参加経験豊富な子が多いせいもあり、異常なほどの盛り上がりで、スキー以外の場面も大いに楽しんでいました。
つり道場
 ここ数年、カワウの影響などで天竜川での釣果があまり芳しくなかったのですが、今年は竿を出せば釣れるという、まさに「入れぐい」状態でした。
 つりの餌にする「ザザムシ」の佃煮は、信州の珍味として食されています。子どもたちは恐る恐るつまみ、いつでも吐き出せる格好で口に入れましたが、出てきたのは「うまい」の一言でした。
 「話し声は水面を反射するから魚には聞こえていない」ことを学んだ後は、友だちと会話を楽しみながら釣りに励み、HS君(新城市/小5)は3日間で何と110匹を釣り上げました。
 釣った魚を食べまくったのはTR君(川崎市/小4)で、「魚が好きなんだ魚が好きなんだ」と連呼しながら8匹も平らげました。
やまびこ村
 21世紀のスタートを飾るにふさわしい、印象に残る8日間になりました。
 何より子どもたちの思い出に残ったのは初日の出登山で、日の出に全員が間に合うようにと、朝四時に起きて歩きだしました。寒さと暗さに、途中でめげそうになる子もいましたが、声をかけ合って無事山頂に到着。
 雲の無い、絶好の天気の中、南アルプスの山から昇る太陽は美しく、朝の光とその暖かさを体中に浴び、「涙が出そうなくらい感動した」と、語るほどでした。
 また、業務用の食器洗浄機を使った時に、IY君(名古屋市/中2)は「レストランのアルバイトみたいです」と言いながら、全員分の食器をきれいに片付けていました。
あそびのかんづめ
 幼児や小学校一、二年生など、比較的年齢の低い子が多かったのですが、冷たい風を吹き飛ばしながら元気にあそびました。
 A組では、ジャンボカルタとりが大人気。勢いよく体ごと札に飛び込む子が続出し、弁当を食べながら「こんなに汚れた」「お尻が土だらけになっちゃった」と自慢大会。
 B組で行った「手作り楽器で音楽会」は、自作の楽器から音が出ることがうれしくて次つぎに鳴らしまくるのでホールがうるさいくらいにぎやかになりました。
 白馬へ出掛けた雪あそびでは、自分たちの背よりも高く積もった雪に大興奮です。ジャンプして雪へ飛び込み抜けなくなったり、雪の中を泳いで競争したりと思い切りあそびまくりました。
自然教室
 厳しい寒さも面白い研究材料のようで、子どもたちは元気に体を動かしながら、自然に働きかけました。
 星について話している時に「赤い星と青い星のどちらが温度が高いか」という議論になりました。意見は二つに分かれましたが「ガスの火は青くて、マッチの火は赤い。だから青い星のほうが温度が高い」と、決着がつきかけたとき、「唇はいつも赤いけど、プールに入って寒くなったら青くなる。だから赤いほうが高い」という発言。大人にはなかなかできない発想でした。
 氷点下の実験では、流しに水をため、それをホースで送って大きなツララを作ろうと考え、手の感覚が無くなる位の冷たい水をバケツリレーでためた班がありました。つららは水の流出量が多くできませんでしたが、朝見に行くと頑張ってためた水と周囲の地面が凍っているという珍事もおきました。

やまびこ村を終えて
高橋哲史(せんぬき)
真ん中に中央アルプス宝剣岳 今回のやまびこ村に障害のある子が二人参加していて、そのうちの一人が所属する班の他の子から、行事などに参加せず輪から外れた時に彼らとどう接したらいいか、村のみんなへ問いかけられました。
 「輪に入らないのはその二人だけでなく、一人になりたい気持ちは時に誰もが持つのではないか」という意見から、議論が盛り上がりました。問題が他人ごとではなく、自分にも関係があるという気持ちが芽生えたのでしょう、「我がまま」あるいは「やりたくないなら無理に誘わなくて良い」という意見が、「理由を聞こう」「言いたくない時もあるから、一度声をかけるだけではなく、時間をあけてまた声をかけよう」と、子どもたちの考えは深まっていきました。また、輪から外れる子に対して「できるだけ自分の気持ちを言葉で伝えてほしい」という要求も出されました。
 さらに、他者へ○○を「してあげる」という気持ちでは、関係が一方的になるのではないかという視点も加わり、結局お互いを尊重しつつ、ひとりぼっちをつくらない村を、主体的にめざしたいのかどうか、一人ひとりに確認しました。
 これで「ひとりぼっちをつくらない」という目標が決まると思いましたが、一人、最後まで納得しない子がいました。会議も長引き、大多数が賛成しているのだから……という空気が流れる中で、自分がなぜ納得できないのかを述べるには勇気が必要だったと思います。その勇気に報いず、多数決で村の目標を決めては台なしで、そもそも「ひとりぼっちをつくらない」という目標に反するので、この日は決議を保留し、場を改めて考えることにしました。
 結局この目標は最終日に決議されました。「遅すぎて意味がないのでは」という見方もあるかもしれません。しかし、期間中にきれいな目標を作ることより、帰宅後もこの話題をより多くの子どもの気持ちに残すことが大切なので、時間をかけました。
 目標の達成度ですが、大多数がその議論に賛成した後も、いきなり行動が変わるわけではなく、輪から外れる子はいました。しかしそんな時に言葉をかけるメンバーは日に日に増え、また、障害のある子へもただ声をかけるだけでなく、何をしたいのかを聞いたり、なぜ加わって欲しいかを説明したり、働きかけも変化しました。ルールを決めたから守ろうという、建前だけの働きかけはぐっと減りました。
高烏谷山山頂で21世紀初日をみんなであびた とはいえ、一人勇気をもって反対した子と村員とが十分に語り合う場をつくりきれなかったことや、目標を守り合う難しさを実感してもらう場面が少なかったこと、そして障害について考えを深め、一緒に生活することについて議論する機会を生かしきれず、その子の所属する班の中での話にとどまってしまったことなど、心残りはたくさんあります。毎日の生活ではなく、あくまで8日間という枠内での取り組みですが、もっとできたのではないかという思いがあります。
 しかし、『やまびこ村』を運営する上で最も大切なのは、その時に集まった子どものペースを守ることです。リーダーや班長など、集団をひっぱる役割を担う人だけの理想や速度で物事を進めると、どうしても「お客さん役」の子どもが増えてしまいます。
 そういう意味では、成功とか失敗という単純な分け方で物事を考えてはいけないのかもしれません。
 21世紀を子どもたちと共に迎える体験は、私にとって非常に価値のあることでした。そして、その時に集った子どもたちの力や雰囲気など、環境によってできることの違いを楽しむ余裕を持ちながら、一人ひとりの子どもの心に残る出来事を少しでも多く生み出せる村創りを、今後も実現していこうと決意を新たにしました。

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